ナーチャリングとは、SNSやメルマガ、セミナーなどを通じて、顧客が必要とする有益な情報を提供し続けることで、顧客の購買意欲を少しずつ高めていき、長期的に、商品・サービスの成約につなげていくことをいいます。
ナーチャリングを結果に繋げていく上では、闇雲に施策を続けるのではなく、「発信したコンテンツがユーザーに必要とされているか」「どういうコンテンツがどういう人に刺さっているのか」などといった効果を、さまざまな指標を分析することを通じて明らかにし、施策のPDCAを回していくことが重要です。
そして、PDCAを回す上では、下記の5点が重要です。
- 複数のパターンを検証し、仮説を生み出す有益なデータを収集
- 構造的に現状を分析し、最重要要因を特定
- ツールを活用し、虫の目・鳥の目・魚の目で分析
- 徹底的にユーザー視点に立つ
- デザイン思考を取り入れる
今回の記事では、ナーチャリングにおいて効果測定が重要な理由を改めて整理した上で、効果の定義の仕方、施策ごとの効果測定指標とツール、効果測定をもとにPDCAを回す上で重要な5点について、具体的に解説していきます。
ナーチャリングにおいて効果測定が重要な理由
改めて、ナーチャリングとは、顧客にとって有益な情報を提供することを通じて、商品やサービスの魅力を間接的に伝え、顧客の購買意欲を高めていくことです。
ナーチャリングを結果に繋げていく上では、顧客にとって本当の意味で価値のある情報を提供することが重要ですが、「顧客がそもそもどういう情報に価値を感じるか」、「価値を伝えるための効果的なアプローチ媒体はどれか」などについて、施策を始める前からわかることは限られています。
したがって、暫定的な仮説の下でナーチャリング施策を走らせながら、顧客の反応をふまえてPDCAを回す(=施策の方向性を軌道修正していく)ことが重要で、その上で効果測定が重要になってきます。
効果をどのように定義・測定するか?
効果測定をする上で、難しいのが、「効果をどのように定義し、測定するか?」という点です。
情報提供によって、顧客が商品を購入する上での課題認識や、自社・自身に対する信頼感などが熟成されることも、立派な効果の1つでしょうし、自社のことをほとんど認知していない見込み客に少しだけ認知度を高めてもらうことでさえも、効果と言える場合があります。
このように、効果を一義的に定義し、それを客観的に測定することは非常に難しいです。
したがって、施策における情報発信の目的を鑑みて、「今回の一連の施策では、何をもって効果とするか?」について十分に検討し、その上で測定指標やツールを決めていくことが重要です。
効果測定指標とツール
メルマガ・ブログ・SNS・セミナー・資料提供など、ナーチャリング施策の手法は多岐に渡りますが、それぞれにおいてどのような効果測定指標を定義し、どのようなツールで測定することが可能か、お伝えしていきます。
メルマガ配信
メルマガの配信内容について、PDCAを回す上では、「開封率」「URLクリック割合」「コンバージョン率」が重要な指標です。
「開封率」とは、メールを受け取ったユーザーのうち、どれくらいの割合の人が実際に開封しているかを示す指標です。
「URLクリック割合」とは、メールを受け取ったユーザーのうち、本文を読み進め、本文中に掲載されたURLをクリックした割合を示す指標です。
この指標により、「メルマガの内容が、ユーザーの興味を惹き、価値を感じてもらえる内容だったのか」「ユーザーがさらに情報を知りたくなるような仕掛け・導線ができていたか」などが明らかになり、コンテンツ見直しの必要性が明らかになります。
「コンバージョン率」とは、メールを受け取ったユーザーのうち、本文を読み進め、本文中のURLをクリックし、自社や自身に対して「何らかのアクション」をとるに至った割合を示す指標です。
「何らかのアクション」とは、購入や問い合わせなど、施策の目的に応じて設定していきます。
これらの指標は、メール配信システムとGoogleアナリティクスを併用し、相互で各種設定をすることで取得することが可能です。
1点、HTMLメールではなく、テキストメールだと、開封率などの一部指標が取得できないため、効果測定指標を検討した上で、メルマガ配信方法を決めていくことがおすすめです。
ブログ配信
ブログ配信のPDCAを回していく上では、メルマガ同様、「コンバージョン率」も重要ですが、加えて下記などの指標の取得が重要になってきます。
- ページビュー数:ページ閲覧数
- Googleなどの検索エンジンにおける検索順位:特定のワードで検索した時に、検索エンジン上で何番目に表示されるか
- 流入経路:SNSでのシェア、Googleオーガニック検索、などどのような経路でブログ記事に辿り着いたか
- 直帰率:ブログ記事を閲覧したのちに、HPの他の記事やページに遷移せず、HPを離れてしまった割合
- 滞在時間:ユーザーがブログ記事を閲覧していた時間
上記をはじめとしたさまざまな効果測定指標を取得することで、「ユーザーはどういう検索キーワードや、きっかけでブログ記事に流入しているのか」「ブログ記事を閲覧したユーザーは内容に満足しているのか、どの段階で離脱しているのか」などが明らかになります。
いずれの指標も、Googleアナリティクスや、Googleサーチコンソール、その他各種ツールを活用して取得することができます。
SNS発信
TwitterやInstagram、Youtubeなどを通じた情報発信においては、コンバージョン率に加え、下記などの指標を測定することが重要でしょう。
- フォロワー数
- リーチ数・インプレッション数:どれくらいユーザーの目に届いたか
- エンゲージメント率:いいねやリツイート、シェア、保存など、ユーザーの反応割合
- SNSからHPへの遷移率
日々発信をしていたら、効果指標に関するデータは膨大になると思います。
Twitter・Facebook・Instagramであれば、Twitterアナリティクス、Facebookインサイト、Instagramインサイトなどと、SNSごとに各種分析ツールがありますので、そちらを活用して効率的に効果測定をしましょう。
セミナー開催
セミナー開催の効果としては、「セミナーをきっかけとした問い合わせ件数」や「セミナーをきっかけとした成約件数」、「セミナーに対する満足度」などを測定するのが良いでしょう。
資料提供
資料提供については、資料ダウンロード数や、資料提供を通じたコンバージョン率を計測することが重要です。
また、資料閲覧者専用の問い合わせ窓口を設けることで、資料提供のコンバージョン率を計測することができます。
効果検証・PDCAを回す上で重要なこと
ナーチャリング施策において、効果検証を行い、PDCAを回していく上で、重要なことを5つお伝えします。
複数のパターンを検証し、仮説を生み出す有益なデータを収集
効果検証・PDCAの目的は、ユーザーに刺さるコンテンツや発信のあり方を軌道修正していくこと。
それを明らかにする上では、複数のパターンを試すことで、それぞれに対するユーザーの反応の違いを収集する必要があります。
例えば、メルマガ読者に一番見てもらいやすい時間を明らかにする上では、午前中や、ランチタイム、夕方、夕食の時間、夕食後の時間、寝る前など、複数の時間候補でメルマガを配信し、開封率の違いを検証することが有効です。
構造的に現状を分析し、最重要要因を特定
現状を漠然と分析するのではなく、要素を分解し、要素同士の関係性を踏まえながら構造的に整理し、現状の結果を引き起こしている最重要要因を特定することが重要です。
例えば、メルマガ配信によるコンバージョン数(お問合せ数)が少ない理由を検証するとしましょう。
ここで、コンバージョン数(=お問い合わせ数)を例えば下記のように分解します。
有効配信割合、開封割合、URLクリック割合、お問合せ割合を比較する中で、どこがボトルネックかを検討します。
さらにいえば、開封割合やURLクリック割合、お問合せ割合などを、メルマガ登録者の属性別で明らかにし、属性ごとの構成比率を踏まえて、最重要のボトルネックを明らかにすることができます。
以上のように、効果測定数値を分析する上では、現状を分解し、構造的に整理することが重要です。
ツールを活用し、虫の目・鳥の目・魚の目で分析
効果測定ツールを利用して、効果測定指標を明らかにしても、数値自体は事実を語りません。
数値を踏まえ、結果を引き起こしている要因を、広い視野・洞察で分析することが重要です。
メルマガ配信であれば、虫の目で、1配信ごとにつぶさに分析していくことや、鳥の目で、メルマガ配信全体や、メルマガ配信以外に視野を広げて分析すること、さらにいえば、魚の目を持って、メルマガ配信を開始してから、現在までの流れ・変化を捉えることも重要です。
あらゆる視点を往復しながら、分析するのが良いでしょう。
徹底的にユーザー視点に立つ
効果測定指標を分析する上で、重要なのは、徹底的にユーザー視点に立つことです。
ナーチャリング施策を続けていく中で、どうしても、施策にかける自身の思いや、うまくいくはずだという思い込みから離れるのが難しいと思います。
ここで、一度、自分の思いを手放し、効果測定指標を眺めながら、この数値からユーザーが何を語りかけているのか?を考え抜きましょう。
デザイン思考を取り入れる
デザイン思考とは、デザイナーのようにクリエイティブな視点で問題解決をしようとするマインドセットのこと。
例えば、ターゲット顧客の精緻な顧客像である「ペルソナ」や、一連のナーチャリング施策における顧客の感情や思考、行動の動きを捉える「カスタマージャーニー」などを整理したり、複数のメンバーを交えたワークショップを通じて、クリエイティブにナーチャリング施策を検討することで、ユーザーにコンテンツが刺さらない現状を打開するきっかけになるかもしれません。