メール配信はマーケティング術として重要な手法です。
販売・提供する商品・サービスを紹介するだけではなく、自社の思いを打ち明けたりD2Cの一環として活用するなど、アイディア次第で幅広い手法が可能です。
しかし、メールの中身だけではなくセキュリティにも気を配らなければなりません。
情報漏洩が大きく報道されることもあるなど、セキュリティへの関心が高まっていますので、メール配信を行う際には中身と同じくらい、セキュリティの意識も高める必要があります。
監修者
メール配信システムエンジニア
平野 邦美
エンジニア歴15年。2010年にメール配信システム導入を支援したことをきっかけにメール配信に興味をもち、2015年からメール配信会社のメンバーとして参画。カスタマーサポート、顧客管理、決済システム導入、マーケティング、セキュリティ対策等に従事するメール配信システムの専門家。
メール配信のセキュリティ対策をしない場合のリスク
もしもですが、セキュリティ対策を行わずにメール配信を行った場合に懸念されるのは情報漏洩です。
メールアドレスが漏れて以降、迷惑メールが増えたとの実例もあれば、「情報漏洩を起こした会社」として、信用を損ねる恐れもあります。
メール配信における社内向けのセキュリティ対策
メール配信にて情報漏洩を防止するための社内で行える具体的なセキュリティ対策として、下記が挙げられます。
- ダブルチェックを行う
- 操作ログを残す
- 操作権限を設定する
- 閲覧権限を設定する
上記の全てを行うことで情報漏洩を高い確率で防止できます。
ダブルチェックを行う
原始的な方法ではありますが、配信前に承認者による目視チェックを含めたダブルチェック体制を取ることでミスの防止に繋がります。
1人だけのチェックでは、ミスに気付けないことも多いです。
そのため、作成者・設定者とは別に承認者を用意し、客観的な視点でチェックしてもらうことで、ミスを未然に抽出できる確率が高まります。
操作ログを残す
操作ログ取得機能が搭載されているメール配信サービスであればメール配信に携わるオペレーターのアクセス・操作ログを残すことで、ミスが起きてしまった際の原因を把握できます。
ミスの理由・原因さえ把握できれば、対策も立てやすいです。
また、アクセス・操作ログを残すと周知することで、オペレーターも慎重に操作をとの意識が芽生え、ミス防止にも役立ちます。
操作権限を設定する
誰がどこまで業務を行えるのか、細かく業務権限を設定することもセキュリティの向上に繋がります。
しかし権限を細かくリスト化することで、情報漏洩の防止はもちろんですが、仮に情報が漏洩してしまった場合も、どの段階で漏れているのか特定しやすいです。
閲覧権限を設定する
業務だけではなく、閲覧権限を設定することも情報漏洩に繋がります。
人為的なものだけではなく、誤操作等で情報が漏れてしまうリスクもあるのです。
しかし閲覧権限を設定することで、顧客情報を確認できる人間が限られます。情報漏洩リスクを抑えると共に、情報漏洩してしまった場合にどこから漏洩したのかを把握しやすいです。
メール配信における外部向けセキュリティ対策
メール配信にてセキュリティ対策を行う場合、外部からの不正アクセス防止だけではなく、受信側が設定しているメールフィルタに弾かれないための対策が必要です。
そこで考えられるのが下記です。
- SSL/TLS(STARTTLS)でメールを暗号化する
- 送信ドメイン認証を行う
これらについてそれぞれ見てみましょう。
SSL/TLS(STARTTLS)でメールを暗号化する
SSL(Secure Sockets Layer)、TLS(Transport Layer Security)によって暗号化するSTARTTLSにてメールを送信することで、不正アクセスを防止できます。
ただし、送信者だけではなく受信者もSTARTTLSの設定が必要になります。受信者がSTARTTLSの設定を行っていない場合、メールを受信してもらえない可能性があります。
送信ドメイン認証を行う
送信ドメイン認証を行うことで、自社の送信するメールが正しいメール、つまりなりすまし等のスパムメールではないと証明されますが、その方法としては下記が挙げられます。
- DKIM署名を設定する
- SPFレコードを設定する
- DMARCを設定する
いずれもメール認証標準とされる確かなものです。
DKIM署名を設定する
DomainKeys Identified Mailと呼ばれる暗号化電子署名です。
そして受信サーバー側が公開鍵を取得して電子署名を照合し、正当性を証明してから受信することで外部からのハッキング、盗撮を防止します。
ちなみにDKIM署名には「作成者署名」と「第三者署名」の2種類があり、メール送信ドメインでは作成者署名が主に用いられます。
SPFレコードを設定する
Sender Policy Frameworkと呼ばれるIPをベースにした認証です。
これにより、指定メールサーバーから送信されたメールを本物だと認識すると共に、指定メールサーバー以外からのメールをなりすまし・スパムメールだと判断して受信しません。
SPFについては下記の記事で詳しく解説しています。
>>SPFレコードとは?仕組みや確認方法・設定方法をわかりやすく解説
DMARCを設定する
送信ドメイン認証の一つで、アメリカでは金融サービスや保険・医療等、サイバー犯罪で狙われやすい気密性の高い業界で採用されていることで知られています。
SPFレコード認証とDKIM署名のいずれか、あるいは両方を使用していると利用できるもので、送信者があらかじめ下記のポリシーを設定することで、なりすましメールの分類が可能です。
- 受信(none):受信可能
- 隔離(quarantine):迷惑メールフォルダに隔離する
- 受信拒否(reject):受信しない
特徴として、認証に失敗したメールも管理できるだけではなく、メール受信元プロバイダからリアルタイムでレポートを受けとることも可能です。
また、第三者署名が許可されていないことから、認証の信頼性が高いです。
セキュリティが高いメール配信システム5選
メール配信にて、セキュリティが大切な理由が分かっていただけたのではないでしょうか。
しかし、これらをすべて自らで設定するのは大変です。そこでおすすめなのがメール配信システムです。
それぞれ特徴が異なりますが、ここでは下記の5つのメール配信システムをおすすめします。
- WEBCAS e-mail
- blastmail
- オレンジメール
- 配配メール
- AutoBiz
それぞれについて、特徴等をご紹介しましょう。
WEBCAS e-mail
大手企業や官公庁に選ばれているメール配信システムです。
毎時1,000万通以上の配信性能、サポートや一か月からのスポット利用が可能なプランなど、多様なメール配信ニーズに対応しています。
さらに管理画面への侵入防止のためにIPアドレスによるログイン制限を行います。
操作もSSL通信にて暗号化するなど、高いセキュリティを誇るメール配信システムです。
blastmail
企業から官公庁まで18,000社以上と契約を結んでいるメール配信システムです。
セキュリティ対策として先にもご紹介したDKIM署名を導入しています。
7日間の無料お試しが用意されていますので、実際に利用してからの導入判断も可能です。
オレンジメール
75,000以上の導入実績を誇るメール配信システムです。
導入から10分で配信が可能な点や30日間の無料体験等、ユーザーに寄り添った環境が特徴です。
システムだけに頼るのではなく、人の目で監視することでシステムと合わせてアクシデントの早期発見を目指します。
配配メール
シンプルな機能のみを搭載した、コストパフォーマンス追求型のメール配信システムですが、セキュリティ機能も多数搭載されています。
また、24時間365日死活監視・応答監視の実施やデータ冗長化・バックアップといった環境も整備しています。
AutoBiz
15,000社以上の導入実績を誇るメール配信システムです。
操作はすべてSSL暗号化通信にて行うなど、可能な限り最善の対策を実施しています。
また、電話とメールによるサポートや設定代行も提供しています。
オンプレミス型のメール配信システムのセキュリティは?
自社の管理施設にてサーバー機器・ネットワークを用意するオンプレミス型は、クラウド型と比べてもセキュリティは変わりません。
ただし、リソースを割ければの話です。オンプレミスは全てが自己責任です。
ただし、導入だけではなくメンテナンスやアップデート等もすべて自社で行う必要があります。これらすべて自社で行えるのであれば、クラウドタイプと変わらないセキュリティにてメール配信システムを運用できます。
セキュリティ対策を徹底してメール配信を行うことでリスクを抑えよう
メール配信システムにもセキュリティが大切なこと、そしてセキュリティにも様々なタイプがあることが分かっていただけたのではないでしょうか。
読者はメルマガの内容も大切ですが、それらは安心という担保あってこそです。
どれだけ有益な情報を配信していても、甘いセキュリティでは読者からの信用を得ることはできません。
そのため、メール配信サービスを選ぶ際には配信機能だけではなくセキュリティも重視しましょう。
システムにて高いセキュリティ環境を整えている配信サービスもあれば、オレンジメールのようにシステムと人間の双方で監視している配信サービスもあります。
配信機能とセキュリティ、双方をチェックし、頼れるメール配信サービスを選びましょう。